30年も昔になるだろうか、大学はそれぞれ違っていたが高校からの友達数名で京都を旅した。 私はジャズを聴き始めていた頃で、皆はマージャンの卓を囲むことになったので、前から気になっていたジャズ喫茶へ一人出かけることにした。当時、ジャズ喫茶は全盛とは言えないまでもまだまだ活気があった時代で、一種独特な雰囲気を醸していた。何と言う店で何を聴いたのかは殆ど忘れたが本田竹曠(『サラーム・サラーム』)がかかっていたのだけは鮮明に記憶がある。後年、一度は倒れた後であったが本田竹曠が近くに来たので、数枚アナログ盤にサインを頂いた。ぼろぼろなジャケを見て驚き、喜んで筆を運んでくれた。私にとってこの盤は30年も昔の夕暮れの京都なのです、とは切り出せなかった。今回は72年録音、本田竹曠の決定的な名盤『This Is Honda』をアップしたい。