好きな街がある。清流に掛かる鉄製の橋から見る夕日が美しく、嘗てこの川の名前を題名にした恋唄をキュートなポップ歌手が歌った。余り聴かないジャンルであるが、この歌だけはストーリー性があり何故か忘れられない魅力的な歌である。その恋唄ゆえばかりではないが、忘れた頃ふと思い出し、無性に訪ねたくなる古くて美しい街である。 この街の魅力は、風景の美しさの外にもう一つある。"廃盤ジャズCD倶楽部"を標榜する私である、中古CD(RD)絡みであるのは言うまでもない。その"V****** Records"というお店は、街の顔でもある歴史的建造物の入口近くにあり、なかなかお洒落な造りである。DUなどのゴミゴミしたお店(謝)とは天と地の違い、加えて店主もなかなかジャズに詳しく、オーディオもいい音で鳴っている。品揃えはDUに比較するべくもないが、忘れていた古い国内盤CDなど偶に出たりするので目が離せない。そう言う訳で今日は長いインターバルがあったがお気に入りの街を訪ねた。残念ながらジャズCDの収穫はなく、仕方なく隣の街まで足を伸ばし、青竹打ち麺で有名なラーメンを食して帰ったのである。 そうそう、忘れてはいけないことがもう一つ。大昔、この街の八百屋の2階にあるジャズのライブ・ハウスで、スティーブ・キューン・トリオの演奏を聴いたことがあった。私にとっては最高のアイドルをかぶりつきで見て、握手とサインと話までして、すっかりミーハー気分を満喫させてもらった。東京の大きな会場では考えられないことである。当時の面子はレザボア時代のデヴィッド・フィンク等で大好きな"The Zoo"を筆頭に好い演奏が聴けた。これは私にとってのヴァンガード・ライブ(笑)、そんな奇跡を起こす街でもある。 そう言う訳で(?)今回の盤であるが静謐なピアノ・トリオの筆頭。アナログでは知られた名盤で、ベーシスト:Ares Tavolazzi のリーダー作『KARS』である。ピアニストはBuruno Cesselli、ドラムスはFabrizio Sterre。湖面に映る透明度のある写真が限りなく美しく、その内容もジャケットの佇まいどおり切ない。 (続く・・) Ares Tavolazzi Trio 『KARS』 (1989 Artis Records ARCD013)
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