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    ■2014/07/21(月) ストイックな自転車乗りとフランク・モーガン

    梅雨どきの湿度を帯びた空気は水底にいるような気持ちにさせる。激しい夕立の雨音を聴きながら縁側に横たわっていると殊更そう思えてくる。けれど根暗な私にとってその感覚は決して嫌いなものではない。この時期雨具を忘れ突然の雨に遭った時の自虐的な楽しみ(?)も格別だ。時にずぶ濡れになるのも好い。小さな日常からの離脱/開放感とでも云える。瑣末な話だが。

    しかしことサイクリングに関しては現実的になり全くこれは該当しない。過日、道が平坦なことに気を良くして川沿いのサイクリング・ロードを江戸川辺りまで足を伸ばした。前夜の雨水が残る道を走ったおかげで自転車が泥まみれになり後のケアで大変な目にあった。爾来雨は大敵となった。

    最近の私的サイクリングの傾向は2つに大別できる。平坦なサイクリングロードを走ること、それと峠を登ること、この2つである。

    休日の今日は重い雲があるものの雨粒を落とすことはなさそうである。で、気分は峠攻め:つまり幾分攻撃的、挑戦的なモードに入った訳である。そういうことで埼玉県の山間部:秩父市の手前に位置する白石峠へ向かうことにした。白石峠はサイクリングの素人、しかも高齢(?)である私にとっては大変な難所である。しかしこの白石峠、実は昔から何度も走っているお馴染みのスポットでもある。但し最初はバイク(エンジン付二輪車の意)で、そして後にはクルマ(四輪車)で。大抵は東京天文台まで足を伸ばすのが常で当時仲間内では低山として手軽なツーリング/ドライブ・コースだったのである。しかし何らエンジンの助けもなく自らの脚力頼みで登るとなると坂のコーナーというコーナーが一斉に牙を剥く。肉体の衰えを感じるたび40歳、いや30歳若かったらと切に思う。今回も何とか峠を越えることができ制覇すること2回目となった訳だが心情的には単純に喜ぶ気分ではない。前述どおりやっとの思い、死ぬ思いで登ったのだ(笑)

    峠を攻めるのは極めてストイックな行為だと思う。心の中で9人の自分がもう体に悪いからペダルを止めて休もうと云う。しかし1人の自分がいやここで止まる訳にはいかないと強硬に云う。そして私は何故か民主主義に反して止まらずにダンシングしてでも漕ぎ続けることとなる。それは偏に断念した後の後悔が厄介なだけだ。それさえなければ直ぐ折れる心だ。限界に近付くと最早自分との戦いだ。マラソンや登山に近しいのかも知れない。いやそのものなのだろう。 決して健康には良いことではないだろう。しかし登る。

    そういうことで自転車乗りは畢竟孤独な行為である。走りながら様々なことを考える。なかでも繰り返し考えるのが、こうして走ることに何か意味はあるのか?ということである。この問いは全てのことに云い換えることができる。答えは意味がないということに落ち着くのだが。すると不思議に気が楽になったりする。

    閑話休題。

    フランク•モーガンというアルト吹きがいる。1950年代にウェストで活動しGNPから唯一のアルバムを発売し当時のお決まりのコース(?)麻薬禍で人生の大半を棒に振った。この辺はどこかアート・ペッパーに似ている。バード亡き後のアルト界の牽引を期待されたがなかなか世の中は上手くいかない。同時期にはキャノンボール・アダレーもバードの後釜を嘱望されていた。そう、バードの後釜は沢山いるのである。いやそれほどにパーカーが傑出していたということの証左であろう。

    そういう訳でフランク・モーガンの話である。

    アート・ペッパーではどちらかと云えば後期盤を贔屓にする私だが、同様モーガンも後期盤が好いと思っている。但しペッパーと違いモーガンの50年代作品は前述どおり一枚しかない。復帰は1985年頃であろうか、世間では死んだと思われていたモーガンだが『Easy Living』という盤をコンテンポラリーから出した。もちろん彼を引っ張り出した者が居るのだろうがここでは触れない。この復帰盤だがシダー・ウォルトン・トリオをバックにしていて以降コンテンポラリーにジョージ・ケイブルスやマッコイ・タイナー等と積極的に吹き込みを行っている。 そこで話が2転3転してしまうが、フランク・モーガンの場合は復帰後が復帰直後の極短期(コンテンポラリー時代)とそれ以降(アンチレス / テラーク / ハイノート時代)とに二分されるのが適当でないかと思っている。つまり1950年代のGNP盤の時代、麻薬渦の大きな空白の時代、1985年頃の復帰直後極短期の活動的なコンテンポラリー時代、そして1989年以降の内省的なアンチレス/テラーク/ハイノート時代の4つに分類できるのではないかと思っている。それでは何故に復帰後を二分するのかと疑問に思われる方のために理由を説明したい。一線を引く最大の理由は内省的な哀愁感の存在である。1989年アンチレス・レーべルに吹き込んだ『Mood Indigo』は真に彼のターニング・ポイントになった作品だと思う。以降の作品の底流にある内省的哀愁感はここにスタートしたとの持論である。

    往々にして人は作品に作者の生涯の陰影を反映させて総体を理解したと納得するところがある。その良否、正否はさておいて、同様手法をモーガンに当てはめれば、彼の人生を棒に振ったとさえ思われる麻薬渦であるが、実に復帰後期においてその悔恨は内省を経て何らかの深みを作品に与えているのではないかとさえ思えてくる。よくある解釈だが解り易い落とし所だ。年老いてからのリー・コニッツにもどこか同じ香りがする。以上聴き手側の勝手な思い込みだ。

    フランク・モーガンは残念ながら2007年に生涯を閉じた。しかし私の手元には復帰後の後期盤が宝石のような輝きをもって残されている。 特に今回は推奨に値する4枚の盤に絞りアップした。 それぞれにコメントしたいがどれも同様な言葉の羅列になってしまうだろう。内省的とか哀愁とか深みとか・・・ 

    Jul21#01   Jul21#02   Jul21#03   Jul21#04 
      
        『Mood Ingigo』      『You Must Belive In Spring』  『Listen To The Dawn』    『Love,Lost&Found』
      (1989年録音 Antilles)     (1992年録音 Antilles)    (1993年録音 Antilles)   (1995年録音 Telarc)



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